阿佐ヶ谷

役者・芸人・文化祭?区役所もある杉並の中心

文化の街阿佐ヶ谷 これぞ「中央線」?

杉並区役所のある阿佐ヶ谷は、杉並区の中心である。といいたいところなのだが、杉並区内でもっとも大きい駅は荻窪で、どこが杉並区の中心なのかがあいまいだ。おかげで、阿佐ヶ谷民は「俺が俺が」、荻窪民も「俺が俺が」と主張しあうハメになっている。

しかし、外から見たイメージとしては、やはり阿佐ヶ谷こそが「ザ・阿佐ヶ谷」となるだろう。阿佐ヶ谷駅のすぐ横を抜ける「中杉通り」は、巨大なケヤキ並木に囲まれた道で、中野から青梅街道まで抜ける道なのだが、やっぱり「並木通り=杉並区」となりやすいのである。さらに、阿佐ヶ谷駅南口の駅広場にはホンモノの巨大な杉の木もあり、「緑の街杉並」を十分にアピールしている。というか、杉並区内の駅周辺でちゃんと「緑の街」をしているのは阿佐ヶ谷だけである。他は和田掘公園とか善福寺公園とか、駅からえらく離れた住宅地域だけだ。

阿佐ヶ谷といえば、文化的なイメージの強い街である。与謝野晶子や太宰治など日本文学史の巨人たちが、関東大震災後阿佐ヶ谷へ移住。「阿佐ヶ谷文士村」などという言葉もあったくらいだ。

現在、目立つのは芸能・演劇関係だ。爆笑問題や長井秀和が所属する株式会社タイタンがあることでも有名。街を歩くと駆け出しの芸人がストリートライブをやっている場合もあるし、有名タレントを喫茶店で目撃することもある。もともと、お笑い系芸能事務所としては「西の吉本、東の太田」ともいうべき存在である「太田プロダクション」がこの阿佐ヶ谷にあり(今は新宿)、この流れが今も息づいているということなのかもしれない。

阿佐ヶ谷の象徴は演劇関係者

数が多いイメージがあるのは舞台演劇関係。「阿佐ヶ谷スパイダース」など、団体名にしてしまっているものもあり、東京の演劇のメッカ下北沢に続く存在として認識されることも多い。

お隣の高円寺が「音楽」なのに対し、こちらは「演劇」。いわゆる「中央線」文化の二大巨頭が隣り合っているというのは面白い。実際、高円寺にはライブハウスや練習スタジオが多く、阿佐ヶ谷は小劇場やレッスンスタジオが多いというようにかなり色分けされている。

阿佐ヶ谷にある小劇場はおよそ9つ。杉並区内には15程度の小劇場があるといわれているが、その半分以上がここに集まっている。「いわれている」としたのは、ミニコンサートを行うようなバー、喫茶店などで演劇が行われることもあり、正確な数を把握しにくいことにあるためだ。これを考えると、実際の数はおそらくもっと多くなる。

阿佐ヶ谷で有名な劇場は、「ザムザ阿佐ヶ谷」「ひつじ座」「シアターシャイン」など。これに、どうみてもただの民家にしか見えないようなものや、すでにつぶれた「スナック」にしか見えないようななものも含むディープな小劇場が加わる。

演劇の世界はディープで、外から見てもその様子が全く分からない世界だ。実際は、TVや映画で有名な役者が小さな舞台に出ていたり、メジャーな芸能界への登竜門だったりすることもあるのだが、メジャーとマイナーの境界線がマイナーで、勢い、「全部マイナー」に見えてしまう世界なのである。

すべての劇団は阿佐ヶ谷から始まる!?

とりわけ、阿佐ヶ谷の演劇事情はマイナー寄りであるといわれている。たとえば、メッカ下北沢でだれば、「下北沢演劇祭」であるとか、本多劇場グループなどといった中心となる存在があり、ビギナー層でも「入門しやすい」環境がある。これに対して阿佐ヶ谷では、普通に歩いていると確実に通過してしまうような劇場とくる。当然、劇団や役者は地元のみで活動するわけではないので、阿佐ヶ谷だろうが下北沢であろうがどちらでも活動するが、実際問題下北沢の劇場は人気があってなかなか押さえられないので、阿佐ヶ谷において行われる舞台は、「下北沢にいけない段階(旗揚げ直後など)」の劇団のものだったりするのである。要するに、阿佐ヶ谷で修業して、下北沢進出というルートがあるのだ。

このような状況なので、阿佐ヶ谷に集まる演劇関係者は、若くビンボーだったり、長い時間うだつが上がらなくてビンボーだったりとそれぞれだが、総体としてビンボーである。まあ、一部の例外を除けば演劇関係という時点で、ビンボーなのだが、阿佐ヶ谷の場合はその最右翼だという状況があるのだ。

ビンボー人でも暮らせる街構成

ビンボーな演劇関係者が集まってくるのは、決して劇場があるからではないだろう。それなら最初から下北沢に住む。

ということは、阿佐ヶ谷はビンボー人でも住める土地なのだろうか。「もっと辺鄙なところだったらさらに安い」という意見もあるとは思うが、彼らはそこから高い電車賃を払って都心まで出るだけの時間も金も無い。電車に乗っている時間と電車賃があったらそれを稽古かバイトに回したほうが得だという計算が成り立つ。

阿佐ヶ谷の街並みは結構地味だ。その中心は区役所のある青梅街道へ向かう南口のパールセンターと中杉通沿い。駅間にこそチェーン系のレストランが入ったビルもあるが、基本的には昔ながらの商店街。周囲には近代的なマンションと並んで、震度5の地震でも倒れかねないオンボロアパートがある。北口には「阿佐ヶ谷駅前ビル」という半円形のビルがあるが、これもすぐに商店街へつながったり、ビルに入っている店がかなり地味だったり、そもそも照明がえらく暗かったりと地味なことこの上ない。万事この調子の地味さ加減が、「安くすめそう」というイメージを喚起し、演劇関係者を呼び寄せるのであろうか。

杉並区の中心なのにそうなれない阿佐ヶ谷

交通の便が良く、区役所もある阿佐ヶ谷であるが、このように「面白そう」なイメージはあっても、「高級っぽい」というイメージは全くない。

ではなぜ、このようになってしまったのであろうか。阿佐ヶ谷は、都心までの交通の便がすばらしくよく、便利な街である。にもかかわらず、駅周辺を覆う雰囲気は、ちょっと古めでビンボーな感じ。杉並区全体は「住みたいランキング」などでも上位にくる、一応は高級住宅街といえる土地である。その中核たる阿佐ヶ谷がこの状況。これこそが、杉並区の「個性」なのかもしれない。

参考:日本の特別地域特別編集 東京都杉並区

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