西武新宿線

練馬との区境を走る住宅地帯

杉並区の形自体がそもそもの間違い

「西武新宿線が杉並区を走っている意味ってなくね?」

先日耳にした身も蓋もないお言葉。だが、実際的を射ている部分も大いにあるのが大問題だ。

杉並区内の西武新宿線は、上井草、井荻、下井草の3駅。中野区から練馬区との区界を抜け、練馬区へ抜ける路線である。この西武新宿線エリアは、杉並区の中で大変なマイナーエリアである。小学校時代に区内の地理を教えられた生れながらの杉並区民以外の住民は、ここを杉並区内だと知らない人間も多いくらいなのである。

このマイナーさの要因は、ひとえにここが完全な住宅地エリアだということができる。住民以外は、他の地域からここへ来る目的と言うものがほとんど皆無。これは西荻窪の場合もそうだが、西荻窪には吉祥寺へ向かう際の中間地点であるという意味がある。これに比べてしまえば、雲泥の差がある。

つまり、この地域は杉並区内に限定して言えば、完全に孤立、もしくは孤立地帯なのである。

街並みも、独立具合を表している。東京郊外の小さな私鉄駅の典型とも言うべき駅周辺。商店街は小さく、食料品や日用品などの必要最低限の店以外はほとんどなく、あわせて飲食店の類も極々少数しかない。駅のすぐ近くにはいきなり農地があったりと、まったく杉並区らしくないのである。

そう、ここは、正しくは練馬区の圏内なのだ。それを如実に表しているのが杉並区の形と西武新宿線の直線具合。杉並区は、東から見て阿佐ヶ谷までは北に狭いのだが、阿佐ヶ谷を過ぎると、急に北部エリアが登場するという形をしている。このため、高円寺・阿佐ヶ谷をメイン駅とする住民には、少なくない量の中野区民が含まれる。そして、西武新宿線は中野から西に向かってほぼ直線で進行。すんなり練馬区に抜けるかと思いきや、杉並区の一部が出っ張っているので、仕方なくそこを通っていると言ったところか。

井草の住民は南を目指す

西武新宿線エリアの住所は、上井草、下井草、井草の3町。ちなみに、この近辺から現在の荻窪・西荻窪エリアまでがかつての井荻村(1926年に井荻町となる)。井荻という地名は、1889年に上井草、下井草、上荻窪、下荻窪の4村が合併するとき作られた地名。つまり、かつて現在の杉並区西部を代表した地域で、一体となっていたわけだが、1932年に杉並区が誕生したとき再び元の町(村)名が杉並区内の一地域として復活してからは再び荻窪圏と分断されてしまったというわけだ。

だが、他の杉並区内から西武新宿線エリアに赴く必要はなくても、交流が無いわけではない。というか、西武新宿線エリアの人間は、買い物のために荻窪を主とした中央線駅までバスや自転車で向かうのだ。来ることはなくても、行くことは大変多いという図式がある。発想を逆転させると、杉並区内の西武新宿線エリアは、「杉並に行き易くて便利な練馬区」と言ったほうが正確なのかもしれない。

そんな西武新宿線エリアだが、協力な産業を抱えている。アニメ製作会社である。日本には、およそ600~700程度のアニメ制作会社があるが、杉並区内には70社以上と全国の10%近くに上る制作会社が集中。さらに区内でもそのほとんどがこの西武新宿線エリアに集まっている。『ガンダム』で世界に名をとどろかすサンライズがある上井草駅前にはガンダム像があり、アニメ版『鋼の錬金術師』で高い評価を得たボンズは井荻駅が最寄りだ。

杉並区もこれを「アニメの杜すぎなみ」として2000年ごろから売り出し中で、区役所もいろいろとがんばっているのだが、地理的には、アニメ産業は決して杉並区のものではない。

アニメ産業の最大勢力はお隣練馬区(制作会社数90社以上)。1960年代に虫プロ、東映動画といったアニメ制作会社が練馬に入り、そこから発展してきた産業なだけに本家は練馬ともいえ、その同一路線上の井草ブロックは、この意味でもやっぱり練馬圏なのだ。ちなみに、本来の杉並区アニメ産業の中心は阿佐ヶ谷。前出の虫プロや東映動画などと同時期に『ルパン』『巨人の星』『それいけ!アンパンマン』シリーズで有名な東京ムービーが阿佐ヶ谷に移転し、そのアニメ産業の中核をなした。だが、同社は1990年代に解散しており、現在阿佐ヶ谷にはシンボルとなるような存在はない。

参考:日本の特別地域特別編集 東京都杉並区

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