杉並の家賃事情

豪邸から激安アパートまでよりどりみどり!

杉並区の家賃

地区ごとにその収入に大きな差がある杉並区。これは住環境にも大きな影響を与えているのではないだろうか。

これは、街を歩いているとよく分かる。同じ町内でも、そのたたずまいが大きく変わるのだ。

最も分かりやすいのが杉並区の西端に位置する松庵だ。ここ松庵は1丁目から3丁目まで3つのブロックに分かれているのだが、それぞれのブロックで「住んでいる人種が違うのでは」と思わせるほど景観が変化する。

では、順を追ってみてみよう。まずは南の松庵1丁目から。1丁目の南端は立教女学院のラインにある。最寄駅は井の頭線の三鷹台だが、通勤・通学ルートの関係や、買い物の利便性などで、西荻窪駅を最寄りとする住人も多い。西荻窪駅までは徒歩で15~20分圏内なので、自転車の利用率が高くなる。

松庵1丁目は、比較的古めの小規模住宅と、家賃の安そうなアパートが多い。新築の一軒家も庭の小さい中、小規模のものが多く、景観からはそれほどリッチ感はない。坪単価は230万円前後だ。

北上すると、井の頭通り(古い杉並区民はいまだにこの道を「水道道路」と呼ぶ)に出る。この道を渡ると2丁目だ。

松庵ブロックで重要なのは、この井の頭通り沿いの2丁目側に、高級スーパーである「三浦屋」があり、1丁目側には100円ショップを併設した普通のスーパー「丸賞」が向かい合っているという図式だ。これに象徴されるかのように、2丁目に入ると景観は一変する。家がやたらと広くなるのだ。

このブロックには、古くからの地主一族の本家があり、その存在が景観に大きく影響しているのは確かだが、それ以外の家もバブル期に建てられたと思しき高級感漂う一軒家が多い。街道沿いには新築のマンションが増えているし、古いマンションも間取りの広いものが多い。坪単価は234万円ほどと高くなっている。

さらに北上し、都内でも有数の校庭の広さを誇る松庵小学校を過ぎると五日市街道に出る。井の頭街道沿いには新築のマンションが目立ったが、こちらは比較的古めの物の比率が高い。五日市街道を渡ると3丁目だ。

松庵3丁目は、その大部分が西荻窪駅まで徒歩10分以内。お隣の吉祥寺駅へも徒歩で20分程度と非常に便利な地域だ。

しかし、3丁目の景観は、駅から遠い2丁目に比べ大変安っぽくなる。一軒家は古めの小規模なものが多く、新築でもごく小規模なものが目立つ。集合住宅はいかにも「アパート」然のものばかりで、いつ崩れてもおかしくないようなものも現存している。昔は、このブロックにも100坪超の中規模住宅が多かったのだが、1990年代後半から「1軒だった土地に3軒家を建てる」いわゆるペンシルハウスが増え、その影響で見た目が安っぽくなっている。松庵3丁目の北端は中央線のラインだ。

このように、松庵町内でももっとも便利なのに、なぜか景観が安っぽい松庵3丁目。坪単価は219万円前後ともっとも安い。ここでは、利便性=土地の価値ではないのである。

不便な場所ほど人気が高い

杉並区では、便利なブロックより不便なブロックのほうがイメージが良いという、一見奇妙な現象が起こっている。杉並区の人気エリアと言えば、浜田山、善福寺、南荻窪など。前出の長者番付データでも上位に来ているブロックだ。しかし、これらのブロックの多くが正直不便な土地。浜田山は井の頭線の急行が停まらない駅だし、善福寺から通うには、西荻窪、吉祥寺ともに自転車でないと距離的に正直つらい。こんな場所が人気なのである。

これをさらに加速させているのが数多く残るオンボロアパートの存在だ。なんと、2万円台というとんでもない安アパートが存在する。これが中央線の駅まで徒歩5分などという大変素晴らしい場所にあったりするのだ。逆に、家賃が40万円を超える浜田山のマンションは、西永福駅から徒歩10分というビミョー極まりない場所だったりする。こんなに安くて便利なアパートが荒れ3場、正体不明の飲んだくれや、モヤシ料理のみで戦う夢見る若者でも杉並区内に移住可能なのだ。

これこそ杉並区に、「ビンボー」と「高級住宅街」のイメージが共存する要因なのではないだろうか。つまり、イメージの良い場所に住んでいる人種がかなりの割合で食い違っているのだ。名実ともに最強クラスの利便性を誇るうえに安い中央線4駅の近くに学生や新規流入層などのいわゆる「中央線」な人々が集まり、古くから住んでいる「旧杉並区民」や高所得者層は駅から遠い場所に住居を構える。このような図式が浮かび上がるのである。

目立っちゃいるけど主流ではない

駅の近くで夜遅くまで騒いでいる連中は目立つ。逆に、駅から遠い場所に住んでいる人間のほうが、必然的に帰宅時間は速くなるだろう。こうして、余計に「中央線なヒト」がクローズアップされていき、駅近くの高級感を取り払っていくのである。実際には、駅近くにも広い家や高級マンションは存在する。だが、「目立ち具合」を考慮すると、どうしても駅近くエリアの分類は、「安い」ほうに傾いてしまうのだ。とはいっても、不動産データを見れば分かる通り、やはり全体として杉並区は「高い」土地だ。ワンルームマンションの平均家賃は6万6千700円(『HOME’S』家賃相場より)と比較的安いが、これは安アパートと高級マンションの平均での数字。区民の多くはある程度以上の所得があるか、もしくは昔から住んでいる層である。つまり、総体としての杉並区民の主流は、決してビンボーで毎日遅くまで飲んだくれている「中央線」な人々ではなく、いわゆる高級住宅地に住む層だと言えるだろう。

参考:日本の特別地域特別編集 東京都杉並区

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