杉並区の教育事情

相当できるぞ杉並区のお勉強

杉並区の教育

かつて、東京都の都立高校には「学区制」という制度があった。これは、簡単に言ってしまえば「近場の高校以外には入学できない」というもの。全国的に廃止が進んでいるあれである。杉並区は、練馬・中野とともに「第三学区」に属していた。

この第三学区が名門だったのである。日比谷、戸山などと常に都立トップの座を争う西高校。旧制女学校の流れをくむ富士高校があり、それ以下のランクの高校も、他学区に比べレベルが高かったのである。

都立高校には原則的に近所の学生しか通えなかったのだから、学区内の高校のレベルが高いということは、必然的に杉並区は中学校のレベルも高かったということになる。また、自由な校風の学校が多く、校則問題が全国的に盛んになった1980年代後半には、区立神明中学校が「都内唯一制服の無い中学校」としてクローズアップされたこともあった。

筆者は、後の「ゆとり教育」を推進するきっかけとなった受験戦争が盛り上がった時代の人間なのだが、当時の杉並区の中学校は確かに学習レベルが相対的に高かった。当時行われていた都内一斉テストでは杉並区が常に上位だったし、私立志望の生徒は名の通った学校への合格者が多かった。

ただ、公立への進学や、私立の推薦に必要な内申点。つまり通知表のつけ方には閉口した。通常、私立志望者の多い都市部の公立中学校では、公立志望者に甘く、私立一本の生徒には辛めに内申をつける傾向がある。一発試験の多い(今は様相が変わってきたが)私立受験に内申はいらないから、妥当な作戦なのである。しかし、その甘め・辛めの度合いがすさまじかった。筆者は私立志望で実際私立高校へ入学したのだが、なんと学校の試験で80点、90点をとっても5段階評価で「2」がついた教科があったのだ。これは教員の苦肉の策の結果なのだろうが、やはり本人としては納得がいかない。しかし、逆を言えば、同じくらいの点数をとった生徒が多くいたため自分が割を食っただけで、後になって考えてみれば、全体のレベルが一定水準にあったがために起こったことだったのである。

だが、最近旧第三学区の都立高校が軒並み偏差値を落としていると聞く。筆者が高校受験をした20年近く前には、すでに都立離れ・私立志向は進んでいたので、学力低下を言われても驚きはしないが、杉並区の高学力に誇りを持っていた身としてはやっぱり不安になる。「東京都学力調査」データによれば、トップでこそないが、小中学校ともにやはり上位であった。

なぜ杉並区は学力が高いか

もしかしたら往年の勢いは無くなっているのかもしれないが、相変わらず杉並区の学力は高いようだ。では、その理由は何だろう。

ひとつには、「環境」というものが挙げられるだろう。これまでに述べてきたとおり、杉並区民の主流はある程度以上の所得がある層である。中・高所得者といえば必然的に高学歴者である可能性が高い。つまり、元から「大学に行って当たり前」という空気があり、それが綿々と受け継がれてきたというわけだ。

杉並区は、言ってしまえば「古い新興住宅街」だ。関東大震災によってもともと住宅地であった都心部・下町が壊滅し、そこの住民が流入したことで人口を増やしてきた。これは、京王線沿線、東急線沿線などと同じ経緯である。

このとき、文化人や学者が多く杉並区へ移住したことは有名だ。前後して、政治家や高級軍人が多く住んだということも影響しているのだろう。こうして杉並区のイメージはアップし、高学歴の一般住民も増えた。この流れが、ずっと続いてきたのである。

国立・私立も充実 学習塾も質量ともに充実

杉並区には有名大学の付属校など私立高校も多い。電車を使わなくても通学できる範囲と言うことで練馬区、武蔵野市などを含めれば学芸大、早稲田、法政、立教(女学院だが)、中央、日大、専修、国学院などよりどりみどりの付属校がある。当然、杉並区を走る各鉄道は都心に直結しているので、都心の有名高校にも通いやすい。こうした空気が、杉並区の高学力を支えてきたのだろう。

教育熱心な土地では当然、学習塾ビジネスが盛んになる。事実、杉並区には学習塾がやたらと多い。杉並区では10~19歳人口が約3万5千人しかいないのに、180も学習塾がある。10~19歳人口が倍近い世田谷区でも261しかなく、1.5倍の10~19歳人口をかかえる足立区とほぼ同数の学習塾があるのだ。もちろん、区内の学習塾に加え、近隣市区や都心の有名学習塾へ通う生徒もいるので単純にこの数字だけでは判断はできないのだが、やはり「杉並区は教育ビジネスがいける!」と学習塾サイドが考えているということは確かだろう。

SAPIXは杉並区発祥!

昨今話題になった杉並区立和田中学校が行った大手進学塾の講師を招いて補修をする「夜スペ」。ここに講師を派遣したのは、日本ナンバーワンの座を争う学習塾SAPIXだ。この会社は本拠を中央区日本橋に置き、首都圏の主要ターミナル駅の多くに教室を持っているのだが、なんと、その発祥の地が荻窪の「西東京校(現 杉並校)」なのである。

SAPIXは、ほかの大手学習塾から有名講師が生徒ともに独立して誕生した学習塾である。そのような経緯で設立された学習塾が最初の教室を杉並区内に置いたということから見ても、杉並区がいかに教育熱心かが見て取れるだろう。その他にも西荻窪に本拠地を置くみすず学苑屋、杉並区内に多くの教室を持つ吉祥寺の東進などもあり、杉並区は今も学習塾天国なのである。

参考:日本の特別地域特別編集 東京都杉並区

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