阿佐ヶ谷は役者の住む演劇の街

激安酒屋で意外な大物に会える

高円寺が音楽の町なら、阿佐ヶ谷は演劇の町である。もともとは、関東大震災後に数多く移り住んだ文化人たちが、現在の「阿佐ヶ谷=演劇」の起源だと言われている。阿佐ヶ谷には3つの小劇場があり、阿佐ヶ谷に本拠を構える(劇団は特定の本拠地の無いものも多いので、正確には「発祥」もしくは「関係の深い」)劇団は筆者が把握しているだけで5つ。おそらく個人規模のものも含めればもっとあるだろう。中でも、俳優の長塚京三の息子である長塚圭史が主宰する「阿佐ヶ谷スパイダース」が有名だ。

東京の「劇団の街」といえばその筆頭は下北沢だが、阿佐ヶ谷はそれに次ぐナンバー2グループの筆頭格といえる街である。もうそこらじゅうにいる。演劇関係者の巣窟と化している店も少なくない。

では、どこに行けば彼らに会えるのか。それは「とにかく安い」焼き鳥屋や居酒屋だ。演劇関係者は金が無い。そこそこ有名な役者でも、小劇場の出演料なんてないも同然だし(マイナスもままあり)、仕事だって不定期だ。だから、「演劇関係者が来る店=安い店」となる。下北沢の劇団員を描いた石田衣良の『下北サンデーズ』では、発泡酒を出す安居酒屋が頻繁に出てくるが、本当にあのレベルの店じゃないと利用できないのである。

また、意外な大物も、こうした安い店で飲んでいる場合がある。今は大物でも、舞台出身の役者というものはほとんどがこうした極貧生活を経ている。普段は銀座の有名店で部位部位云わしているような人物でも、なつかしの阿佐ヶ谷に帰ってくると、過去によく利用した激安居酒屋に帰ってきてしまうのだ。

しかし、なぜ「演劇関係者は阿佐ヶ谷」なのだろうか。これは、やはり極貧生活を送る役者の卵たちでも入居できるレベル、具体的に言ってしまうと家賃2万円台のボロアパートが豊富に残っていることに起因するのだろう。そして、金が無い故に一つのアパートに数人で同居する。何かと便利だからみんなが近くに住む、というサイクルがある。

飲食店のバイト君は将来のスターかも?

ファーストフォードなどの各種チェーン店やレンタルビデオ店など、24時間営業や早朝・深夜営業をしているお店、または居酒屋など夜の営業がメインの店のバイト君、バイトさんにも注目。一部を除き演劇関係者はとにかく金が無い。とくに、デビュー前だったり、小さな劇場に出ているだけでTV、映画にはまだ進出していない若い役者などは、例外なくアルバイトをしている(普通の仕事をしながらの場合もあるが)。やっぱり地元が多い。昼間は稽古があり、舞台は夕方からの場合が多いので、役者の卵たちは早朝や深夜に働ける場所をバイト先として選ぶ必要がある。こうして、阿佐ヶ谷の町で働く役者の卵たちが出来上がっていくという寸法だ。なじみの店員が、気が付いたらTVに出ていたなんてことも全く驚くことではない。阿佐ヶ谷ではバイト君たちと仲良くしておくと、いずれお得な気分が味わえるかも知れないのだ。

参考:日本の特別地域特別編集 東京都杉並区

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